八王子の現場は前の二か所とは明らかに様相が違っていた。
民家やアパートの廃墟を使って儀式を行う反魂儀呪にしては珍しく屋外だ。しかも今までの儀式跡より規模が大きい。
何より最も異なるのは、視認できるほどの結界が敷かれていたことだった。
「一応確認だけど、あの結界の壁は13課が現場保管のために敷いているものじゃないんだよね?」
「違います。直桜なら視認しただけで、わかりますよね。私が気付くくらいです」
護が驚きを通り越して呆れた声を出す。
「まぁ、そうなんだけどね」
げんなりした声が自然と漏れた。
つまりこの場所だけ、他とは違う呪術が行使されていたということだ。
(この流れでいけば、神を繋ぐ鎖の儀式。神置か神封じのどちらかだ)
桜谷の集落でも、時々行われていた儀式だ。惟神に相応しい人間が現れなかった時のために、その場所に神に留まってもらうための場所を作るのが神置だ。
神封じなら文字通り、人間以外の入れ物か場所に封印する。
どちらであったとしてもあまり良い想像は出来ない。
「念のため、清人に連絡入れてくれない? この場所に枉津日神がいる可能性が高いから」
直桜の言葉に護が表情を強張らせた。
「もしいたら持ち帰るね、って伝えて」
「そんな、荷物か何かみたいに……」
スマホでメッセージを打ちながら、護が呆れる。
「俺的にもかなりの大荷物だけどね。さすがに一人の|人間《器》に二柱の神は降ろせないからさ」
メッセージを送信し終えた護が、表情を変えた。
「現場保管用の結界も解かれています。13